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Mina Mesbahi & Saori Minamino

今や日本だけでなく、他の国でも続々と水上太陽光発電プロジェクトが導入されている。英語では「floatovotaics」もしくは「Floating solar」とよばれるこの技術は、太陽光発電を地上に導入する際、規制や土地の問題で難しい場合の代替え策として、以前よりも受け入れられるようになってきた。

以前よりも有名になってきた水上太陽光発電システムだが、実際この技術は水と太陽光をうまく利用し活用することを可能にしているのだろうか。この記事では、弊社が新たに更新した「世界の稼働済み水上太陽光発電プロジェクト規模別ランキングTOP70」リストと、シエルテール本社のCamille Mariere氏へのインタビューをもとに、水上太陽光発電市場を取り巻く状況、市場の成熟度、2017年にどの程度の規模が導入されたのか、水上太陽光発電システムが環境に及ぼす影響などについて述べていきたい。


TOP70ランキングのポイント:

  • 2017年度の累積導入量は2016年よりも倍増している

  • TOP70中、最も大きな発電所は40MW、最も小さな発電所は706KWである

  • TOP70中、たった1つの企業がリスト中の半分以上のプロジェクトに携わっている

  • TOP70中、54の発電所が1つの国に集中している


   梅ノ木古凍貯水池(埼玉) - 画像はシエルテール社より提供

梅ノ木古凍貯水池(埼玉) - 画像はシエルテール社より提供


世界の稼働済み水上太陽光発電プロジェクト規模別ランキングTOP10

順位 規模 (kWp) 発電所名 / 貯水池・池名 所在地 稼働時期 プロジェクト開発
1 40.000 安徽省 鉱山地盤沈下地域 中国 ** ** **
2 20.000 安徽省 鉱山地盤沈下地域 中国 ** ** **
3 13.700 千葉 · 山倉水上メガソーラー発電所 日本 ** ** **
4 9.982 Pei County(沛県) 中国 ** ** **
5 7.550 川島太陽と自然のめぐみソーラーパーク 日本 ** ** **
6 6.776 Jining GCL 中国 ** ** **
7 6.338 クイーン・エリザベスII世・貯水池 イギリス ** ** **
8 3.000 Cheongpung池 韓国 ** ** **
9 3.000 Otae 貯水池 韓国 ** ** **
10 3.000 Jipyeong 貯水池 韓国 ** ** **

**すべてのデータを見るにはリストをダウンロードしてください


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TOP70ランキングリストから見る  -  2017年度の導入量

今回のTOP70リストにおける水上太陽光発電所の合計導入容量は211MWであった。2016年度のリストと比べると倍以上増えている。一番大きな発電所は40MW、一番小さな発電所は706KWである。一方昨年のTOP70リストでは、一番大きなものは20MW、一番小さいものは5KWであった。この比較から、昨年よりも大幅に増加していることがわかる。また。今年のリスト中で特に目を引くのはやはり中国で水上太陽光発電プロジェクトだ。いずれも安徽省の石炭採掘跡地に導入されており、たった2年の間に導入量が劇的に増加した。昨年と比較すると導入容量は3倍で、リストの上位3位はすべて安徽省のプロジェクトである。今年のリストを見ると、発電所の所在地については全体的にアジア圏に集中しており、昨年に比べ多様性が少ない結果となった。規模別のランキングのためリストには掲載されていないが、実際はポルトガルやトルコ、オランダなど、他にも多くの国で導入されている。


TOP70ランキングリストから見る -水上太陽光発電所の所在地

理論上、水面であれば水上太陽光発電システムは世界中のどこにでも設置することができる。しかしTOP70のリストを見てみると、およそ77%の水上太陽光発電所が日本にある。これは発電所数を基にした割合であり、導入容量で見た場合は71%であるが、それでも日本おける導入量の割合が高いことは明白である。導入量がここまで多い理由としては、日本の地理的な要因や、太陽光発電に対するFIT価格の高さなどが関係していると思われる。プロジェクトとして利益を出すためにはある程度大きな規模の発電所を建設する方がよいが、地上への導入はもうスペース的にも限界に近い。「それならば水面を利用しよう」という創造的な解決策が水上太陽光発電所である。昨年のTOP70リストの発電所の所在地はイギリスが2番目に多かったが、調査後、今年のリストは韓国が2番目に多くの発電所を保持している(リスト中10%を占める)という結果になった。その他の国で今年のリストにランクインしている国は、中国、イギリス、台湾、ベルギーである。


   安徽省 鉱山地盤沈下地域の水上太陽光(#1)

安徽省 鉱山地盤沈下地域の水上太陽光(#1)

   クイーンエリザベス貯水池(イギリス)(#6):画像はシエルテール社より提供

クイーンエリザベス貯水池(イギリス)(#6):画像はシエルテール社より提供


TOP70ランキングリストから見る  - 水上太陽光発電市場の成長

世界経済フォーラムによれば、水上太陽光発電システムは10年以上前から導入されていたが、当時は前例がないこともあり、導入量や規模は小さく、限られた数と地域に発電所があった。現在では世界中至る所で導入されており、数や容量も増え、技術開発が進み発電性能も以前に比べ増している。TOP70リストをみると、2014年中稼働済みの水上太陽光発電所の導入数は3か所だったにもかかわらず、3年後には100ヶ所以上の発電所が建設され稼働している。個々の発電所の規模も大きなものが増えており、フランスに本社を置くシエル・テール社によれば、同社は2017年6月から70MW規模の水上太陽光発電所の建設を始めているという。このプロジェクトは中国の安徽省における、中国節能環保集団(CECEP)という国有のエネルギー開発団体が主導するもので、2018年中に稼働する予定とのことだ。今や中国は化石燃料の消費にブレーキをかけ、太陽光発電エネルギーをはじめとした再生エネルギーの導入をさらに加速させており、世界の中でもリード的な存在になっている。


水上太陽光発電システムの導入   -   環境への影響は?

世界的に太陽光発電システムの価格が下がってきていることもあり、水上への導入も以前に比べ性能が高いものを、より手ごろに普及できるようになってきている。特に水上太陽光発電市場は成長市場の段階に突入しており、今までの方法・場所で建設できない場合の代替手段となりうる。通常、水上太陽光発電所のフロートは人工なものであろうと自然なものであろうと、水が張っている場所に設置する。事実上はあらゆる業界の民間企業、公的事業団体のいずれかによって設置をすることが可能だ。また、水上太陽光発電の導入は特に、水を大量に消費する産業にとって有益である。土地を保持・保全することに懸念を持つ企業、例えば農業をメイン事業とする企業にとって水上太陽光発電は、エネルギーを生産するための理想的な事業モデルとなりうる。

環境への影響についてだが、水上太陽光発電システムを導入するにあたり、周辺の野生生物や水中にいる生物に害があるのではないかという意見を目にすることがある。このことについてシエル・テール社にインタビューをしてみたところ、水上太陽光発電システムの導入はは環境に有害どころか、逆に非常に有益であると述べている。詳しく聞いてみたところ、例えばフロートを設置することで、池や貯水池の藻の成長を減少させることができ、水の品質を維持するために役立つという。もちろん設置場所や条件によるが、シエル・テール社は既存の生態系を保持しつつ、貯水池などに水上太陽光発電所を設置している。藻類も、多すぎれば悪臭など周りの環境に悪い影響を与える可能性がある。同社は、設置場所の水質を維持し、発電所だけでなく周りに生息する生き物に対して適した生息地を提供することによって、理想的なバランスをとることを目的としている。また。例えば同社がアメリカ(Kunde)で導入した水上太陽光発電プロジェクトでは、フローティングとエアレーターを組み合わせ水を混ぜあわせることで、結果的に水中の酸素供給度を向上させることができたという。ほかにも環境への影響に対する懸念事項として、水上太陽光発電所の水面カバー率の割合がある。水面をパネルで覆う割合について、どの程度までなら大丈夫なのか、基準はあるのかを聞いてみた。この疑問に対してシエル・テール社は、水面カバー率を決定する際は現場の条件や気温、風、設置の仕方などの要素を考慮する必要があり、プロジェクトによって変わってくると述べた。同社のプロジェクト全体の平均水面カバー率はだいたい30%から60%であり、まれに70%以上のカバー率をもつプロジェクトもあるが、顧客のニーズなどにも左右されるとのことである。最後の懸念点として、太陽光発電所の設置の際のトラブル起こりうる光反射の問題について聞いてみた。これに対しシエル・テール社は、今まで光の反射によって野生私物への被害が及んだなどの報告は受けていないと述べた。


   阿公店にある貯水池(台湾) - 画像はシエルテール社より提供

阿公店にある貯水池(台湾) - 画像はシエルテール社より提供

   河原山池水上太陽光発電所(兵庫) - 画像はシエルテール社より提供

河原山池水上太陽光発電所(兵庫) - 画像はシエルテール社より提供


水上太陽光発電システムの導入   -   オペレーション&メンテナンス

あまり話題に上がることのない水上太陽光発電所のO&Mについても、シエル・テール社のCamille Marliere氏に聞いてみた。水上太陽光発電は、設置に関しては地上と水上の間に大きな違いはないが、O&Mに関しては、プロジェクトによって色々な点を考慮しなければならないと言う。例えば大きな貯水池へシステムを導入する場合、設置の際にボートが必要になる。したがってボートを利用しなければならない場合、同社はボートによる発電所へのアクセシビリティやメンテナンスを容易にするため、フロートパスを事前に作成する。逆に小さな貯水池へ導入する場合はボートは必要ない場合が多いため、比較的容易だという。また、同社のフロートはは浮力の原則とメンテナンスの制約に基づいて設計されているため、足元は非常に安定しており、導入作業を行う者に対し非常に安全なものとなっているという。水上太陽光発電もほかのエネルギーシステムと同様、メンテナンスに関わるコストがある。地上への導入と違う点としては、フロートボルトなどの点検が必要になり、これらのコストを最適化するためにシエル・テール社は保守をするにあたっての制約を考慮し、それに応じて安全性と費用対効果の間の、適切な均衡を保ったシステム設計や提案を行っているという。同社は顧客のニーズに応じてメンテナンスが必要な場合にそのサービスを提供する準備を整えているとのことだ。最後にMarliere氏は「我々はHydrelioソリューションを設計し最適化した。そしてこれからもHydrelio製品の力がより発揮できるように常に最適化し続け、水上太陽光発電所を容易かつ安全に保全し、維持できるようにしていきたい。」と述べ、インタビューを終えた。
 


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