今年の5月に第4回目となるソーラーアセットマネジメントアジアのカンファレンスが開催されました。カンファレンス2日目の「グリッド&ストレージ」セッションでは、ファーストソーラージャパン社が「太陽光発電所の系統運用補助サービス」について、ブルームバーグニューエナジーファイナンス社が「蓄電池導入の機会」についての講演を行いました。

そして同じく2日目の最終セッションでは、はじめに東京電力による基調講演が行われ、その後のパネルセッションではCO2O、ゴールドマンサックス証券、ソラリグジャパン、そしてAMP、4社から講演者を迎え、コスト削減、政府による政策、将来の動向などのディスカッションが行われました。

 1.系統運用とデモンストレーションの信頼性

大規模太陽光発電所において必須の系統運用サービス

ファーストソーラー社のPVシステム担当副社長であるMahesh Morjaria氏は、大規模発電所における系統運用サービスをサポートするさまざまな方法について述べました。

Morjaria氏はまず、ユーティリティスケールの発電所がグリッドに提供する3つの主要サービスについて述べました。その3つは以下になります。

  1. グリッドの安定性
  2. 信頼できるサービスの必要性
  3. 系統運用補助サービスの推進

Morjaria氏は「ファーストソーラーが初めて大規模発電所を開発したとき、我々は2012 *NERCより発行された 「Interconnection Requirements for Variable Generation」という報告書に沿って開発を進めました。」と言いました。

*NERC:North America Electric Reliability Corporation( 北米電力信頼度協議会)

重要な特徴の1つはプラント制御システムです。 グリッド条件、グリッドポイントにおける無効電力や有効電力、そして送電線の電圧を測定することにより、すべてのインバータの出力を迅速に平滑化することができ、雲量による影響が減少されます。

基本的な信頼性サービスを実証するために、グリッドオペレーター(カリフォルニアのISO* )に協力してもらい、First Solar社はISOから4秒ごとにAGC(Aotomatic Governor Control)のシグナルを受け取るようにしました。

* ISO = Independent System Operator (独立系統運用機関)

受け取るシグナルには以下のものが含まれています:

  • 周波数制御
  • 電圧制御
  • 系統順応容量の出力変化率能力
「ガスタービンによる周波数調整の精度は40〜60%です。 あなたが射手であり、100個の矢を撃った場合、そのうちの60個が標的に当たったようなものです。 しかしPVの場合は、パワーエレクトロニクスの発展のおかげでガスタービンよりも周波数をより早く、より良く制御することができます。」
Mahesh Morjaria ファーストソーラー社、PVシステム担当副社長

周波数と電圧を通常の制限内に保つことにより、最終的に安定したグリッド運用が達成されます。

蓄電池導入のリスクと機会

ブルームバーグニューエナジーファイナンス(BNEF)社のアジア太平洋地域担当責任者であるジャスティン・ウー氏は、蓄電池導入の歴史と将来的な用途について講演をしました。そのポイントは以下になります: 

  • 1年間でだいたい100GW の太陽光発電システムが導入され、そのうち蓄電池の導入は約1.2GWである。
  • BNEF社は、今後10年間で世界的に蓄電池市場は成長し、規模は約100GWになると予測する。

現在適用されている蓄電池は短期間のバランス調整を提供するためにユーティリティ規模の施設に導入されているものが大半です。 しかし、住宅やC&I(商業・工業施設)への導入容量も今後増えてくると予想されます。

「電池製造のトレンドは、10年前の太陽光パネルの状況と並行して進むだろう」
ジャスティン・ウー BNEF社、アジア太平洋地域担当責任者

BNEF社によると、リチウムイオン電池の年間価格指数が1,000ドル / kWhから、96ドル / kWhに低下したことを確認しました。 同社は、世界中で蓄電池の生産能力が倍増するたびに、蓄電池の価格が18%低下すると予測しています。 

蓄電池産業

ジャスティンは「コバルトやリチウム鉱山への投資が増えています。 たとえば、韓国で成功した蓄電池産業を考えてみましょう。 蓄電池メーカーにとっては、国内資源の供給は重要でなく、長期的な原材料契約を確保することがより重要になるでしょう。」と言います。

 また、彼は「ユーティリティ事業者は現在有利な状況です。彼らのみが唯一顧客へのアクセスが可能だからです」と述べます。ユーティリティ事業者所有の蓄電池の利点は、依然として顧客が電力に頼っていることです。ユーティリティ事業者が所有する蓄電池は、システムオペレーターがこれらのサービスを費用対効果の高いリソースとして引き続き提供することを可能にします。

2.将来に向けて―今後の検討事項

ソーラーアセットマネジメントアジアの2日目、最後のセッションでは、東京電力の深津直明氏が電力網の現在および将来の状況についての講演を、そしてその後はCO2O、ゴールドマンサックス証券、ソラリグジャパン、そしてAMP、4社によるパネルセッションが行われました。4人のパネリストたちはコスト削減、政府による政策、将来の動向など、日本の太陽光発電市場が進む道について議論し合いました。

Utility 3.0

まず、東京電力の深津直明氏による基調講演では、日本のグリッドの現状とそれがソーラーインテグレーションのためにどのような意味を持つのかを説明しました。 この説明には、電気グリッドの3つの歴史的反復が含まれています。 

Utility1.0:系統、地理的にも分かれている10社の電力会社は本質的に独占的な存在でした。 AMP社の笠松氏は、「規制が緩和されてきています」と言い、続けて「将来、電力会社は固定された契約の代わりにサービスを提供するようになるでしょう」と述べました。 

Utility2.0(今現在の段階):分散化・脱炭素化・人口減少・デジタライゼーションを通じて送配電と事業をアンバンドル(分離することにより)グリッド改革が可能になります。 

Utility3.0:グリッドサービスを提供するために、電力会社はますます他のプラットフォームと統合されます。 これらのサービスには、分散型エネルギー資源管理システム(DERMS)も含まれます。 

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買取価格の推移、ビジネスモデルや市場動向

2017年に行われた入札制度では500MWまでの入札が可能でしたが、実際入札された容量ははるかに少なく、これは現在の補助金利では非常に困難であることを示しています。 

「日本政府は目標を達成し、市場を安定させ成熟させたいと考えています。 市場を構築するためには、補助金に頼らなくても生き残ることができる再生可能エネルギーが必要になります。」
笠松 純 AMP社エグゼクティブVP

進捗状況とコスト削減

Solarig JapanのエグゼクティブディレクターであるVallejo氏は、FIT制度が終了した場合のグローバルビジネスモデルを再構築するプロセスについて、高い規制リスクと機会の減少にも触れながら説明しました。「収益の観点から見て、他の国ではどのように機能しているかを見てみましょう。 (ユーティリティや商業規模の)コーポレートPPA、そしてエネルギー貯蔵サービスといったものは、オフテイカーにとってプレミアムかつ、出力抑制へのソリューションにもなります。」 

さらに、CAPEXのコスト最適化も選択肢にあげられます。 これには、グローバルEPC価格(50%から15-20%)間のギャップを縮小することが含まれます。 OPEXに関しては、メンテナンス活動やリソースの最適化などのコストを最小限に抑えます。

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財政的懸念

ゴールドマン・サックス証券にてストラクチャード・ファイナンス部門長を務める井上徹氏は「2つの重要なトレンドがあります。それはリファイナンスや国際投資です。 セカンダリーリファイナンスはセカンダリー市場のトレンドにも関係してきます。 ゴールドマンサックスの顧客の中には、ホームエクィティベースでの資金調達や、企業の信用供与による資金調達を行っている方もいます。 これらの顧客は、リコースローンのリファイナンスも検討しています。 これらの傾向は必ずしも懸念事項ではなく、認識すべき動きです」と述べます。 

アセットマネジメント市場、O&M市場の構築

O&Mにおける目標と、達成すべきことをはっきりと理解することが不可欠です。 O&M提供者にインセンティブを与える方法をつくることがポイントになります。 さらに重要なことは、O&Mはどのように価値を高め、プラント性能を向上させるのか?ということです。

「我々は発電所を運用し事業を行っており、完璧な要塞を建設しようとは考えていません」
笠松 純 AMP社エグゼクティブVP

出力抑制の開始

日本のFIT法では、系統運用者は、接続可能量を超えた場合、需要と供給のバランスを取るために施設ごとに最大30日間の無補償で出力を抑制するよう要請できます。 

日本の「無制限の出力保証」に関しては、電力事業者の懸念はあったが、非常に限られていました。 その根拠は、削減リスクを軽減する前述の技術を含むグリッド運用補助サービスなどの開発です。


最後の点は、報告書の需要と供給の見積についてです。 いくつかの非常に重要な要素が失われているる可能性があります。報告書でよく誤解される要因は次のとおりです。

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  • 拡張されたグリッドキャパシティやストレージを考慮していなかった。 政府の方針には当然これが含まれている。 
  • 報告書は出力抑制を考慮していない、今から8年後の供給状況を報告している。 
  • 予測や定量化することが非常に難しいため、供給側を予測することは困難であり、30%の出力抑制見積もりをもたらす。
  • ほとんどすべてのレポートは、成長の低下と経済状況の低迷を理由に、需要の減少を予測している。 しかし、これには電子機器の使用やEVの導入は考慮されていなかった。 エネルギー需要は平準化されるかもしれないが、電力需要は増加する可能性がある。 

結論として、日本のエネルギーインフラは引き続き大量の太陽光発電の導入を実施し、蓄電池の開発を呼びかけています。 しかし国が2030年に向けて設定したエネルギー導入目標はあまり野心的ではなく、見直す呼びかけも高まっています。やや保守的ではありますが、 日本は新技術の革新と成熟した市場を通じて、太陽光発電産業が進化し続けることを望むでしょう。

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