先日開催したウェブセミナーではPowerhub社とSitemark社(旧Dronegrid社)から講演者をお迎えし、「太陽光のアセットマネジメントとO&Mをデジタル化する際に避けることのできない影響」や、その具体的な例についてお話いただきました。

セミナーでは、PowerHub社のプロダクトディレクターであるJames Pagonis氏に、PV業界のデジタル化におけるトレンドと集中データの意義についての概要を、Sitemark社(旧Dronegrid社)の代表取締役であるVishal Punamiya氏は、現地での点検をデジタル化することの影響についての講演を行いました。特にVishal氏は、ドローンによって撮影されたデータを利用することについて、そして、エンタープライズによるドローンの導入と、各サイトの情報をデジタル化し運用ワークフローや意思決定プロセスにうまく組み込むことについての説明を中心に講演を行いました。

1. 情報の集中化と資産管理の効率化

セミナーはまずJames氏によるプレゼンテーションから始まりました。同氏は、まず再生可能エネルギー業界で当初期待されていたことと現実に起こっていることの相違、特にレギュレーションや財務、環境、そして健康に関するコンプライアンスの変化について説明をしました。上記の項目をすべて管理するにはかなりの時間を費やさなければならず、結果的に管理を可能にする関連ツールが必要になります。James氏が言うには、従来の古いシステムを利用し続ける場合、パッチを当て続ける人を巻き込んでいるため、システムの拡張がうまくできなくなるとのことです。

このように、システムに人間による作業が多く介入すると、同じ情報が様々な場所に格納されるため情報の重複や欠落が起こり、作業を重複する原因になります。さらに、アセットマネジメントのプロセスが複雑になるにつれて、従来のシステム(人間による作業を多く含むシステム)ではもはやその複雑さに対処できなくなり、これにより以下のような問題がでてきます:

  • 意思決定が遅くなる
  • 透明性が欠如する
  • さまざまな調整が困難になる(特に、内部だけでなく外部(第3者)と資産管理をコーディネートしなければいけないアセットマネージャーたちにとって)
"デジタル化が成功することは、芋虫が蝶に羽化することと似ている。上手くいかなければ、それはとても速い芋虫にしかなれない"
ジョージ・ウェスターマン (George Westerman) デジタル経済に関するMITローンイニシアチブの主任研究者

デジタル化における重要なゴールの1つは、効率化やダウンタイムに関わるリスクを削減・軽減することです。これは、特に太陽光発電システムの場合、それらに付随する本来の最大理論性能のために有益です。したがって、期待通りの一貫した出力を確保することは、リスク軽減プロセスの重要な結果につながります。また、デジタル化のもう1つの利点は、デジタル化プロセスを導入することでチームに新しい機会を提供し、データ収集や分析にかかる時間を大幅に短縮できる可能性があるということです。

1.1 どこから始めるべきなのか?考慮すべき事項は何か?

James氏は、「10個のプロジェクトであっても、2ギガワットのプロジェクトであっても、すべての様々な規模のプロジェクトにおいて、ソフトウェアの価値があります」と述べます。同氏は、プロジェクトごとではなく、「ポートフォリオに関するプロジェクトの複雑さ」によってソフトウェアの価値が異なってくると付け加えました。ポートフォリオの複雑化に伴い、デジタル化の価値が飛躍的に向上していると言います。

PowerHub社の経験では、彼らの潜在的顧客はまず、多くの数字や、望ましい結果について記載されたリストを提示してくるといいます。これはJames氏に言わせれば、早すぎるアプローチだそうです。まずは優先順位に基づいて分類し、解決したいと思っている、日常的に起こる問題のリストを作成する方がずっと効果的だといいます。これを行うことで、特定のニーズに対応する適切なソフトウェアを選択することができます。 また、もう1つの考慮すべきポイントは、ソフトウェアから最大の利益を得るために「イントロスペクション(内省)」を行い、既存のデータを分析することだといいます。

最後にJames氏は「ソフトウェアに驚かされよう!(Let the software surprise you!)」というキャッチフレーズを述べ、説明を終えました。

2. アエリアルインスペクション(上空からの検査)と考慮すべき重要なポイント

James氏の説明の後、Sitemark社のVishal氏がアエリアルインスペクション(上空からの検査)の説明をしました。Sitemark社の検査アプローチは、、画像の取得プロセスと操作の計画に影響を与える、「予期される結果」を最初に特定することから始まります。これらの要因は、データがどのように取り込まれ、分析、処理されるかに影響します。

2.1 サイト調査

自社が有するマイニング分野の専門知識を活用するSitemark社は、プロジェクトが建設される予定のサイトの地形を正確に理解することが非常に基本的なポイントの1つであるといいます。 プロジェクトリスクを大幅に軽減するプラットフォームの、その他の基本的なパラメータは次のとおりです:

  • 原価計算と計画の改善
  • 正確なデータに基づくデジタルモデリング
  • プロジェクトリスクと予算オーバーランの大幅な削減

2.2 エンジニアリング段階

Vishal氏は屋根をベースにした発電サイトの例として、計画中と工事中には小さくても、それだけ多くのリソースを必要とする傾向がると説明しました。同氏はSitemarkのソリューションはポイントクラウドから自動的にCADモデルを作成できるといい、他社が主に提供しているソリューションは点群からCADモデルを作成するための手動操作が必要となるため、太陽光発電市場では非常にユニークなソリューションだということです。エンジニアリング段階での他の利点は次の通りです:

  • 手作業の大幅な削減(労力を4倍から8倍削減)
  • 正確なデータに基づくデジタルモデリング
  • プロジェクトコストの削減と安全性の向上

2.3 建設段階

この段階で考慮すべき重要な事項は、CADモデルと完成モデルの比較です。Sitmark社のプラットフォームでは、CADモデルをアップロードすることができます。これと取り込まれた画像データを基にして、パネルの公差や角度などを確認することができます。
そして、最終的には、地理的距離などの潜在的限界にかかわらず、さまざまなステークホルダー間で比較し、コミュニケーションをとることが重要になります。

2.4 オペレーション受入れ&メンテナンス段階

Vishal氏によると、Sitemark社の独自技術では無人機がその通常の経路上を飛行している間に、すべての単独ピクセルを6つの異なる位置から補足できるということです。その背後にある理論的根拠は、画像処理ソフトウェアがレンズのぎらつきや、反射を伴うピクセルを自動的に見つけ、それを別のアングルから捕らえられた同じピクセルで置き換えることだといいます。これにより、最終的なデータに歪みがないことを保証しながら、レンズのぎらつきを自動的に除去することが可能になり、正確に異常を検出することができるようになります。同氏は、「温度を標準化していないため、0.1度までの精度で、ピクセルレベルで未処理のデータをキャプチャすることができます。」と述べています。例を示すために、以下の画像をご覧ください。画像ではサイト引き渡しの準備が整う前に修正する必要がある問題が緑色で検知されています。

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空中検査アエリアルインスペクション(上空からの検査)に関して考慮すべき点は次のとおりです:

  • 使いやすく展開しやすい
  • 品質と適合性(IEC TS 62446-3:2017)
  • 社内システムとの相互運用性
  • コラボレーションやオーダーメイドのツール
  • 豊富な資産規模(200kW~200MWの規模)
  • 地理的にスケーラブル(拡張に対応できる)

2.5 ケーススタディ

  • 屋根設置型太陽光発電プロジェクト:下記は185個の屋根に、150 MW規模のシステムを設置したクライアントのサイトの写真です。統計的に有意なバイパスダイオードの不具合が特定され、この原因が製造上の問題であることが判明しました。
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  • 地上設置型太陽光発電プロジェクト:下記写真は14ヵ国、140サイトに設置され、計3.5GWのポートフォリオをもつクライアントの例です。 統計的に有意なPID問題が1つのサイト全体で観察されています(画像緑色)。興味深いのは、これらの問題が ストリングの正極側と負極側、両方で発生していたということです。このようにSitemark社が行う検査によって、クライアントはO&MサービスプロバイダーとEPC会社に、この以上に対して適切な質問をすることができます。
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2.6 なぜオートメーションが重要なのか?

Sitemark社の場合、「自動化されたプロセス」は同社が提供するプラットフォームのバックボーンであり、 同社のプラットフォームには以下の能力が伴っています:

  • 熱画像とRGB画像の組み合わせによるAI&機械学習に基づく方法
  • ローカリゼーションと分類(文字列、PID、植生、汚れ、ダイオード問題、ジャンクションボックスなど)
  • オンラインで完全にデジタル化され、さまざまな種類の問題を特定の潜在的根本原因と関連付ける機能を提供(例:観察された問題に基づいて複数のベンダーを比較するなどが可能)

最後のポイントは、相互運用性です。複数のデータセット(例えばストリングマップのインポート)を扱うことができるか、そして一元化のされた情報で共同作業できる能力があるかが重要です。さらに、さまざまな変数を比較する機能であり、最終的にクライアントに発電サイトに関する優れた洞察を提供することが重要になります。

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