ソーラープラザは先日、Mott MacDonald(モットマクドナルド)グループ、アジア太平洋地域PVプログラムリーダーのPhil Napier(フィル・ナピエール)氏に「照射と収量推定方法の主な違い」についてインタビューを行いました。

上記のインタビューでは、既存のファイナンシャルモデルがどのようにして推定方法に制限やリスクをもたらすのか、そしてシステムデザインが運用中の太陽光発電所のパフォーマンスやO&Mにどのように影響を及ぼすのかについてお話いただきました。そのインタビューの概要と、フィル氏のコメントについて下記に記します。

   Phil Napier(フィル・ナピエール)

Phil Napier(フィル・ナピエール)


日射量の測定とその課題は?

太陽光発電所の日射量の推定に影響を及ぼす主な要因は以下の2点である:

1.サイト特有の微気候(設置場所によって条件が変わる)

主に衛星データを基に推定し、評価される。サイト固有で測定した日射量は、ほとんどの新規プロジェクトにおいて利用することが不可となっている。

2.空中間に浮遊するエアロゾル

主に近隣地における地上測定データへの影響によって評価されるが、それに関連した直接的な測定値は通常利用することが不可である。

地上気象観測データの利用について

気象庁(JMA)から提供される地上気象観測データは最大61局から測定されるため、かなり正確な測定が可能。さらに、このデータは大気中に浮遊するエアロゾルが宇宙と地面との間に及ぼす影響を正確に理解するために利用することもできる。さらにほかにも、日本全国約840地点から計測された日射量データベース(年間時別日射量データベース(METPV-11)や、年間月別日射量データベース(MONSOLA-11)なども広く参照されている。

しかしモットマクドナルド社の見解では、日照時間から日射量を推定することや、古い観測データを利用していることを考えると、このデータベースをユーティリティ規模の太陽光発電所への適用する場合、許容できないほどの大きな誤差をもたらす可能性があると考えている。したがって、気象ステーションから得られたデータのみではすでに計画されている太陽光発電所のサイトの微気候に関する有用な分析を行うことができず、これが現在日本における課題である。

衛星データの利用について

一方、衛星データは日本の特定の地域の微気候について、地上データの代わりに利用でき、空間解像度3kmの範囲内まで計算することができる。(250mの範囲にすることも可能)また、雲の形によって影響する日射量のような、微視的な影響についても特定し、推定することが可能である。

しかしやはり衛星データに関しても単独で使用すべきではない。国内にある様々な地域のデータを入手し確認することはできても、主にエアロゾルに関する質の高いデータインプットがないため、多くの場合正確性に欠けている。

衛星データを扱う際にもっとも重要なことは、地上気象観測データを用いて、代表的な場所で常に検証されるべきであるということだ。世界の多くの地域で、代表的な場所における検証は同じ国に位置していることを意味するに過ぎず、やはり気候の複雑さ次第で変わるということに注目すべきである。

例えば、チリと南アフリカの太陽光発電所があるサイトの大部分は、かなり単純かつ平易な地形で、放射線のばらつきも限定されているため、100km離れた場所のサイトのデータソースを用いて別の場所のサイトの検証精度を証明することが十分できる。
しかし日本の場合、複雑な微気候、距離や時間によって変動しやすい放射線パターンのため、上記の検証方法を当てはめることができない。結果、日本列島全体の衛星データのパフォーマンスに大きな違いが生じるのである。

最適なデータソース

結論として、衛星データと地上データから提供されるデータの性質はそれぞれ限られているため、両方のデータを組み合わせて使用することが日本で一番理想的な方法である。なぜ市場で引用されている他のデータベースソースの使用が示唆されないのかという疑問が出てくると思うが、これに関しては、そのデータの精度が欠けているということが最も重大な弱点である。それに、他のデータソースと組み合わせて精度を向上させるような、信頼できるアプローチはまだ存在しない。

様々な収量推定方法

市場の異なるプレーヤーの間で、最も顕著な体系的な差異を伴う収量推定方法は、陰影や積雪によるロスに関する領域にある。さらにもう一つ言えば、当時最初に屋根上やキロワットレベルでの太陽光発電プロジェクトに対して導入されたJIA規格(C8907:2005)を利用し、簡略化されたアプローチを行っている人がまだまだ多いという点がある。この規格では、直流送電の電力変換ロス、シェーディング、パフォーマンス特性など、いくつかの単純な要素が伴うが、この手法はユーティリティ規模のPVプロジェクトでは推奨されていない。なぜなら、こういった単純化が、評価の精度に悪影響をえるからだ。

影による発電ロスとパフォーマンスへの影響

フィル氏はまず、「一般的に最良の方法は、electrical shading effect (電気的遮光効果)とも呼ばれる、線形陰影効果と非線形陰影効果の両方を組み合わせた方法を使用することです。」と述べた。同氏はこれが国際的な業界標準と認識しているが、現段階ではこの手法は日本ではまだ取り入れられてはいないという。

日本にはゴルフ場など、非常に複雑なサイトも数多くある。影のかかり方は敷地の下地の傾斜の急峻さと方向、やモジュールの取り付け方法の違いなど、サイトのさまざまな部分で異なる。影が多くあることを理由にその場所をあえて空白にすることがあるが、この方法によりプロジェクトの平均投資収益率が低下するのを防止することができる。

地形的に複雑なサイトでは、発電所のデジタルモデルを手作業で構築することは時間と労力を要するだけでなく、詳細なレイアウトの最適化のためにも実用的ではない。効率と精度を高めるための最適な選択肢として、3Dレイアウトシミュレーションパッケージを利用することが役に立つという。フィル氏はこれについて、「これらのパッケージは、デジタル地形プロファイルに基づいて配列を自動で設定してくれます。モットマクドナルド社では「Helios3D」というパッケージを利用しており、我々のパートナーEPC企業の一部も同様のものを利用しています。日本においてははこのパッケージの利用により、最大258MWpの大規模PVプロジェクトを最適化することができました」と説明してくれた。

積雪による発電ロスがパフォーマンスとO&Mに及ぼす影響

積雪による発電ロスを推定するための業界標準はまた広く認識されていないため、プロジェクトの業績に決定的な影響を与える可能性がある。合理的な推定モデルはいくつかあるが、広く利用されてはいない。にもかかわらず、これらのモデルは日本での展開に成功しいる。課題としては、サイトにおける降雪データの不足していることと、降雪量が毎年大きく変動することだ。したがって、現場での長期にわたる積雪条件の決定的なアイデアを得ることは困難といえる。この領域は収量の推定のみならず、効果的な運用のための設計にも関係している。フィル氏は「雪荷重の設計について考えるときは、サイトにおける最大積雪深を知ることが重要になります。」と述べる。

設計コードには、敷地の場所に応じて最大積雪深度を選択する余地がある。「弊社は完成したプロジェクトをレビューする際、構造設計の実装コストを節約するために、最も控えめな値よりも、最も控えめな設定を使用することがよくありましたが、のちにかなりの数の障害が見うけられました」とフィル氏は述べた。

また、土壌凍結による影響もしばしば無視されることがある。O&Mに関しては、除雪への取り組みと、雪解け期間中における施設のアクセス可能性の観点から、積雪深について知ることが重要になってくる。これは、構造物の高さ、敷地のレイアウト、インバーターハウスへのアクセスなど、無数の要因に影響するからである。

除雪への戦略について、モットマクドナルド社は積雪除去のためのロボット関連の進歩についてはまだ限られた可能性しかないとみている。しかし、潜在的に実現可能技術が他にある。インバーターハウス、発電所へアクセスするための道路の除雪ではなく、PVモジュールから雪を取り除くのに特に役立つ「リバータ技術」だ。この技術では、雪を溶かすためにモジュールにDC電流を注入する。さらに、雪がモジュールから滑り落ちるのを防ぐコーティングが施されている。また、もう1つの実現可能な方法は、外部の暖房網を使用して敷地の道路から雪を除去することだ。ただ、これらの技術はユーティリティ規模の発電所に導入するにはまだまだ初期段階にある。

日本における民事的・電気工事関連の問題

モットマクドナルドグループは、日本において200以上の太陽光発電プロジェクトに取り組んできた。その実績はもうすぐ5GWになるという。日本で取り組む際に見受けられた共通の問題の1つは、ケーブルと変圧器の基本的な変換効率が国際標準から逸脱していることでであった。「EPC契約の際において通常参照されるべきであるが、ケーブルや変圧器の最小限の効率または最大損失関する特定の基準が日本にはないです。」とフィル氏は述べる。
ほかに見受けられた障害は、構造的な問題や民事的な問題が発生しやすいことだ。その問題の多くは適切な排水システムに関連しており、システムが正常に導入されない場合、土壌浸食を招き、構造の安定性や下流の水質に影響を与える可能性がある。

既存のファイナンシャルモデルで、どのようにして存在するリスクや制限に対処するのか?

設計上のリスクに関しては、一般的に、ファイナンシャルモデルで許容される建設コストのコンティンジェンシーが存在する。プラントの引き渡しの前または後に問題が検出されるかどうかによって、2つのシナリオが考えられる。あらかじめEPC請負業者の監督が十分にあれば、彼らに一括払いで問題を修正するよう依頼することは可能だ。建設の時点で問題が発見されず運用中に障害が発生した場合、通常コンティンジェンシーレベルは低く、資本の置き換えや大規模な修復は不可能である。

まとめると、日本の太陽光発電市場が成熟し、早い段階から高いFIT価格が導入されていたことから学んだ教訓は、ケーブルや変圧器の選定やプラント監視システムなどの初期段階で設計された発電所を再考する機会を提供してくれたということである。例えばケーブルおよび変圧器の選択、発電所のモニタリンスシステムによる改善などだ。ACシステムの交換では回収期間が短くなるが、プラントのDC-AC比をさらに最適化の機会として再検討することもできるだろう。

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